9月に入り、夏の終りを実感しつつ、今年の夏もいい夏だったなと感傷に浸っている、大阪吹田の司法書士・行政書士の伊藤貴胤です。
業務備忘録。
本日は珍しい業務のお話。
イギリス年金の生存証明書のお話です。
英国年金の支給を担当するイギリス年金局では、概ね2に一度、英国国外の受給者の生存証明確認を行っており、受給権利の失効した(死亡した)受給者への支給及び「なりすまし」による不正受給を防止する活動を行っているとのことです。
受給者に届く生存証明回答指示書は、受給者本人が生存中であり、受給を継続する権利が有る事を確認する目的で送付されたものとなり、発行日から8週間以内に、本人申告分と証人の認証書類の返送を行うよう指示をしており、その期限までに回答が無い場合は、英国年金の支給を停止となるそうです。英国国外在住の年金受給者が死亡していないか、変更通知義務のある事項を規定通り届けているか、確認をするもので、日本の年金の、「受給者現況報告」(年1回)と同趣旨のものです。
支給停止とならないためには、イギリス年金局に依頼者が生存していることの証明書を提出する必要があり、その証人(Witness)を弁護士、司法書士、税理士、公認会計士、医師等などに頼む必要があるとのこと。
Witnessは日本で、馴染みのない言葉ですが、目撃者、立会人の意味。ただ署名による法的責任は意外とあいまいで、このLife CertificateのWitnessとは、日本の婚姻届、離婚届に証人署名欄がありますが、それに近い感じです。
Witnessの実例は他にも色々あるようで、文書上の例示には、
①銀行、住宅金融会社の役員・幹部社員もしくは会計担当
②法廷弁護士、事務弁護士、その他法廷宣誓立合い人
③医者、歯医者、心理相談士、薬剤師
④政府役人幹部、市長、町長など
⑤判事、検察官、治安関係の地域委員会メンバー
⑥聖職者(牧師)
⑦介護、養老施設責任者 などなど。
Witnessの署名欄に職業を記載する欄があるのですが、「司法書士」を英語でいうと「Judicial Scrivener」。何か日本語よりもかっこいい気分になるのは私だけですかね?そして、免許証・パスポート等で依頼者本人を確認し、「Judicial Scrivener」として間違いなく確認した証明として、署名して職印をつくわけです。すること自体はあまり多くはありません。
しかしこれ、普通に手続きできる人はいいですが、日本の受給者確認のハガキもそうなのですが、受取人が認知症になって返送を怠った場合や、なにせ英文で送られてくる書類を理解できる人間が周囲に確保されていない老人である場合、いつのまにか英国の年金が停止される可能性だってありえるのが怖いなぁと率直に思った次第です。
今回の依頼者は2度目の方ですが、また2年後、このお仕事ができることを切に願っております。